【2024年3月の制度変更について】 旧「新創業融資制度」は2024年3月末に廃止されました。現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」として統合・拡充され、融資上限額も7,200万円に引き上げられています(旧制度は3,000万円)。本記事は2025年6月時点の最新制度をもとに執筆しています。
神宮前あおば税理士法人 / 経営革新等支援機関
創業融資は「事業計画書の質」で決まります
申請要件・審査・面談対策まで、認定税理士が実務に即して解説します
「創業融資を受けるには何が必要ですか」「事業計画書はどう書けばいいですか」——創業を準備している方から、毎月こうした相談をいただきます。
日本政策金融公庫の創業融資は、民間銀行では対応が難しい創業期でも利用できる公的制度ですが、事業計画書の作り方や審査対策を知らないまま申請すると否決されるケースも少なくありません。
本記事では、申請要件・審査で見られるポイント・面談対策・よくある失敗まで、経営革新等支援機関認定税理士の立場から、実務に即した情報をお伝えします。
こんな方に読んでほしい記事です
- これから創業融資を申請したいが、何から始めればいいかわからない
- 事業計画書の書き方に自信がなく、税理士に相談したい
- 過去に融資を断られたが、再チャレンジを考えている
- 「新創業融資制度」から制度が変わったと聞いて不安を感じている
日本政策金融公庫の創業融資とは
日本政策金融公庫(JFC)は、政府が100%出資する政策金融機関です。民間金融機関では対応が難しい創業期・小規模事業者に対して、低金利・長期の融資を提供することを使命としています。
創業融資の中心的な制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」です。2024年3月に廃止された旧「新創業融資制度」の後継として統合・拡充されたもので、融資上限額が大幅に引き上げられました。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
| ご利用いただける方 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金の使いみち | 事業開始に必要な設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円(旧・新創業融資制度は3,000万円) |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置期間5年以内) |
| 返済期間(運転資金) | 10年以内(うち据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 要相談。無担保・無保証での対応も可能な場合あり |
民間銀行との違い
創業融資で公庫が選ばれる理由は3点です。第一に、創業前・創業直後でも申請できる点。民間銀行は通常、2〜3期分の決算書を求めますが、公庫は事業計画書で評価します。第二に、政策金融機関ならではの低金利と長期返済。運転資金は最長10年、設備資金は最長20年返済が可能です。第三に、無担保・無保証に柔軟な点。「経営者保証免除特例制度」の利用で保証なしの融資も選択肢に入ります。
現在の金利水準(令和8年6月時点)
創業融資は「税務申告を2期終えていない方」の区分が適用されます。利率は担保の有無・申請者の属性・要件によって異なります。
無担保・税務申告2期未満(令和8年6月1日現在)
基準利率3.45〜5.15%
特別利率A経営革新等支援機関の指導あり
3.05〜4.75%
特別利率B(女性・35歳未満・55歳以上など)2.80〜4.50%
特別利率C(特別利率BかつVC出資等)2.55〜4.25%
※ 利率は金利情勢により変動します。最新の利率は公庫公式サイトの金利情報ページでご確認ください。
税理士のポイント
経営革新等支援機関に依頼すると「特別利率A」が適用されます
公庫の制度では、「中小企業の会計に関する基本要領・指針を適用しており、認定経営革新等支援機関(税理士・公認会計士・中小企業診断士等)による指導および助言を受けている方」は特別利率Aの適用対象となります。
つまり、資格を持つ税理士を関与させることで金利を下げられる可能性があります。神宮前あおば税理士法人は経営革新等支援機関認定税理士として、事業計画書の策定支援から申請書類の作成・面談同行まで対応しています。
申請要件
新規開業・スタートアップ支援資金の利用資格は「新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方」ですが、以下の点を押さえておく必要があります。
① 適正な事業計画の策定と実行能力
公庫の要件には「適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」という条件があります。事業計画書の提出が必須で、その内容が審査の中心になります。
② 自己資金の水準
申請時点でどの程度の自己資金があるかは審査に影響します。自己資金ゼロでの申請は厳しいのが実情ですが、「いくら必要か」という明確な基準はなく、業界経験・事業計画の質・既存の取引先などの要素で補える場合もあります。
③ 信用情報・業種の適合性
一部の業種(風俗営業関連など)は対象外です。また、既存の借入状況・信用情報(CIC等)も審査対象となるため、延滞がある場合は事前に相談が必要です。
審査で本当に見られている3つのポイント
書類審査に加えて担当者との面談が行われます。審査で特に重視されているポイントを整理します。
① 事業計画の現実性と数字の根拠
売上計画が楽観的すぎないか、コスト見積もりに根拠があるか、資金繰りの見通しが立っているかが確認されます。「どうやって顧客を獲得するか」という営業戦略と、「いつ黒字化するか」という収益計画が具体的であることが重要です。
② 借入期間内に返済できる利益計画になっているか
審査担当者が最も重視する点のひとつが返済能力です。月次の収支計画が、設定した返済期間(運転資金なら最長10年、設備資金なら最長20年)の中で無理なく返済できる利益水準になっているかを確認されます。売上が上がっても利益率が低すぎて返済に充てられない、あるいは返済額が月々のキャッシュフローを上回るような計画は、いくら数字に根拠があっても厳しい評価を受けます。収支計画を作る際は「毎月の返済額 + 生活費(個人事業主の場合) + 運転資金の余裕」をカバーできる利益を確保できているかを必ず確認してください。
③ 代表者の業界経験・実績
これから始める事業について、過去に関連する業種・職種での経験があるかが審査に影響します。未経験分野への創業は審査ハードルが上がります。職務経歴書や関連する資格・実績を丁寧に整理しておきましょう。
事業計画書の書き方
創業融資の申請で最もつまずきやすいのが事業計画書です。公庫では「創業計画書」という所定の書式があり、以下の内容を記載します。
| 記載項目 | ポイント |
| 創業の動機 | なぜこの事業を始めるのか。職歴・経験との関連を具体的に記載。 |
| 経営者の略歴 | 業界経験・資格・実績を明記。事業への関連性を強調する。 |
| 取扱商品・サービス | 誰に何を提供するか。競合との差別化ポイントを整理。 |
| 取引先・取引関係 | 既存の取引先があれば記載。予定でも根拠があれば有効。 |
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金・運転資金の内訳と、自己資金・借入の調達比率。 |
| 事業の見通し(収支計画) | 月次の売上・費用・利益の予測。根拠となる数値の説明が必要。借入期間内に返済できる利益水準になっているかも確認される。 |
特に収支計画は「なぜこの売上が見込めるか」という根拠説明が弱いと審査担当者から突っ込まれます。同業他社の平均単価・客数・稼働率などを参照しながら、保守的かつ現実的な数字を組み立てることが重要です。
加えて、借入期間内に返済できる利益計画になっているかどうかは審査の核心のひとつです。月次の返済額を収支計画に織り込み、返済後もキャッシュフローが黒字を維持できる計画になっているかを事前に確認してください。税理士と一緒に計画を作ると、この返済シミュレーションも同時に組み立てることができます。
申請から融資実行までの流れ
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事前準備・必要書類の収集
創業計画書の作成、通帳コピー・本人確認書類・許認可証(必要業種)などを準備。税理士が関与する場合はこの段階から事業計画書の精度を高めます。
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公庫への申し込み(窓口・郵送・WEB)
最寄りの支店窓口、郵送、インターネット(事業資金お申込みサイト)から申し込み可能。
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担当者との面談申込後1〜2週間程度
公庫担当者と事業内容・資金計画・返済見通しについて面談。創業融資では必ず実施されます。税理士の面談同行も可能です。
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審査面談後1〜2週間程度
提出書類と面談内容をもとに審査。追加書類の提出を求められる場合もあります。
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融資決定・契約手続き
審査通過後、借用証書・返済予定表などの契約書類に署名します。
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融資実行(着金)申込から概ね1〜2ヶ月
契約完了後、指定口座に融資金が振り込まれます。申し込みから融資実行まで通常1〜2ヶ月を見ておきましょう。
面談で聞かれること・面談対策
公庫の面談は「査定のための対話」です。審査担当者は書類だけではわからない代表者の人柄・熱意・事業理解の深さを確認します。以下は実際によく聞かれる質問です。
- ▶「なぜこの事業を始めようと思ったのですか?」
- ▶「最初のお客様はどうやって獲得する予定ですか?」
- ▶「売上計画の根拠を教えてください」
- ▶「計画通りに売上が上がらなかった場合はどうしますか?」
- ▶「他に借入はありますか?」
面談のポイントは「書類と話の内容に一貫性があること」です。計画書に書いた数字をしっかり説明できるよう準備しましょう。当事務所では、税理士による面談同行サービスを提供しており、本番前のシミュレーションから当日の同席まで対応しています。
よくある失敗パターン
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❌ 売上計画が根拠なく楽観的
「1日10名 × 客単価5,000円 × 25日 = 月125万円」のような計算はよく見えますが、その前提(なぜ1日10名来るのか)の説明ができないと否決につながります。競合他社の実績・立地条件・具体的な集客施策を根拠として示しましょう。
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❌ 必要書類が不完全なまま提出する
許認可が必要な業種で許可証の取得前に申し込む、通帳コピーが直近のものでないなど、書類不備は審査期間が延びる原因になります。事前に担当窓口や税理士に確認してから提出するのが安全です。
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❌ 面談で事業計画の数字を説明できない
計画書は税理士や代行業者に作ってもらったが、内容を自分で説明できない——という状態は面談で露見します。計画書の作成プロセスに経営者自身が主体的に関わることが、面談突破の前提条件です。
よくある質問(FAQ)
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自己資金が少ない場合でも、創業融資は受けられますか?
自己資金がゼロに近い状態での申請は難しいのが実情ですが、「いくら必要か」という明確な基準はありません。業界経験が豊富・販売先がすでに確保されている・技術力が高いなど、事業計画の説得力で補えるケースもあります。まずは事業計画書の内容を固めることが先決です。
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創業前でも申し込めますか?
はい、申し込めます。「新たに事業を始める方」も対象です。ただし創業前の場合は、事業計画の実現性がより厳しく審査される傾向があります。また、許認可が必要な業種は許可を取得してから申し込むのが一般的です。
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審査にはどれくらいの期間がかかりますか?
申し込みから融資実行まで概ね1〜2ヶ月が目安です。書類不備や追加確認がある場合はさらに時間がかかります。創業のタイミングに合わせて早めに動き始めることをおすすめします。
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税理士に依頼すると何が変わりますか?
主に3つのメリットがあります。①事業計画書の精度が上がり、審査通過率が向上する。②経営革新等支援機関認定税理士が関与すると特別利率Aが適用される可能性があり、金利負担を下げられる。③面談同行により、担当者からの質問への回答を事前に準備・本番でサポートできます。
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融資が否決された場合、再申請できますか?
再申請は可能ですが、否決から6ヶ月程度の期間を空けるのが一般的です。否決された原因(事業計画の不備・根拠の弱さ・信用情報の問題等)を分析し、改善してから再申請することが重要です。原因が特定できない場合は税理士にご相談ください。
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法人と個人事業主、どちらで申し込んだほうが有利ですか?
融資審査上、法人・個人事業主で有利・不利の差はほとんどありません。どちらの形態で創業すべきかは税務・社会保険の観点から総合的に判断することをおすすめします。
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インターネット販売(EC)やフリーランスでも申し込めますか?
はい、申し込み可能です。EC・フリーランス・コンサルタントなど、実店舗を持たないビジネスモデルでも融資実績があります。ただし売上予測の根拠(SNSのフォロワー数・既存クライアントのリスト・実績等)をより具体的に示すことが重要です。
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新規開業・スタートアップ支援資金以外に使える公庫の制度はありますか?
はい。女性・若者・シニア起業家向けの「女性、若者/シニア起業家支援資金」、再挑戦者向けの制度、技術・ノウハウに新規性がある方向けの「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」など複数の制度があります。属性や事業内容によって適用できる優遇制度が異なるため、公庫窓口または税理士にご確認ください。
この記事の著者
神宮 明彦(Akihiko Jingu)
税理士 / 神宮前あおば税理士法人 代表パートナー
経営革新等支援機関 認定税理士
freee 5つ星認定アドバイザー
MFクラウド ゴールドメンバー
EY税理士法人 出身
EY税理士法人でグローバル企業・大手上場企業の税務実務を経験後、2018年に神宮前あおば税理士法人を設立。経営革新等支援機関の認定税理士として、日本政策金融公庫の創業融資における事業計画書の策定支援・面談同行を数多く手掛け、クライアントの多くが融資獲得に成功している。freee 5つ星認定アドバイザー・マネーフォワード クラウドゴールドメンバーとして、スタートアップを中心に150社以上のクラウド会計導入・税務支援を担当。慶應義塾大学商学部卒。
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